アデノウイルスという病名は、プール熱や気管支炎として有名ですが性感染症の側面もあります。
尿道炎の原因にもなるアデノウイルスについて。
特徴や症状、おもな感染経路や治療法について医師が解説します。
目次
アデノウイルスとはどんな病気?
まず、アデノウイルスには51種類の型があります。
型の種類によって、気管支炎やプール熱と呼ばれる咽頭結膜熱、出血性膀胱炎、急性胃腸炎、などを引き起こします。
飛沫感染や接触感染がおもな感染経路ですが、セックスやオーラルセックスにより感染するケースも。
クラミジアや淋菌とも同時に感染することもあります。
また、アデノウイルスは非クラミジア性非淋菌性尿道炎の原因に。
非クラミジア性非淋菌性尿道炎とはクラミジアや淋病以外が原因の尿道炎です。
クラミジアや淋病が陰性にも関わらず、排尿時に痛みがあったり下腹部に違和感がある際には非クラミジア性非淋菌性尿道炎の可能性もあります。
非クラミジア性非淋菌性尿道炎の原因の内、アデノウイルスが3番目に多いという報告もあるため、尿道炎の原因になり得る病原体として覚えておきましょう。
アデノウイルスの症状
尿道の症状
- 排尿時痛
- 透明の膿
- 尿道口(尿道の出口)の発赤
- 血尿
上記が尿道の主な症状です。
アデノウイルスによる排尿時の痛みは強く、こちらの症状で来院する方が非常に多くなっています。
透明の膿はサラサラしたものや、ネバネバとしているものまでありますが、比較的量は少なめのことが多いでしょう。
尿道口(尿道の出口)が赤くなったり、血尿が出るケースもあります。
また、尿道炎には40%に結膜炎を合併するリスクも。
視力低下の原因になる可能性もあるため、アデノウイルスの疑いがある際には眼科受診をおすすめしています。
結膜の症状
- 充血
- 目やに
- 眼痛
上記が結膜の症状です。
アデノウイルスは型によってはやり目(流行性角結膜炎)の症状も現れます。
はやり目は年齢を問わず起こる目の病気。
充血し、目やにも出ますが、同時に眼痛を感じることもあります。
咽頭結膜熱のように高熱が出ることはありませんが、非常に強い伝染力があります。
学校保健安全法上の学校感染症の一つでもあるため、学校は登校禁止になります。
はやり目の充血や目やにがとれたあとも、ぼやけて見える、まぶしく見える、目に違和感がある等の症状が残ることがあります。
この原因はアデノウイルスに対して、異常な炎症が起こっているからです。
この炎症は数ヶ月続く可能性もあります。
アデノウイルス尿道炎の人は目が充血していることも多いので、
膀胱の症状
- 頻尿
- 残尿感
- 下腹部違和感
膀胱には上記の症状があらわれることが多いです。
排尿時の痛みとともに頻尿に悩まされる人がいるのも特徴です。
胃腸の症状
- 下痢
- 嘔吐
- 嘔気
- 気分不快
- 微熱
- 腹痛
胃腸の症状としては上記が挙げられます。
アデノウイルスによる胃腸の症状は、ロタウイルスによる胃腸炎と似た症状が見られます。
気管支の症状
- 咳
- 痰
- 発熱
アデノウイルスは型によって、鼻炎、咽頭炎、扁桃炎などの気道炎を起こします。
症状には個人差がありますが、重症化する可能性も。
死に至るケースもあるため早めの治療が必要です。
咽頭扁桃の症状
- 咽頭痛
- 発熱
- 頭痛
アデノウイルスの型でも有名な咽頭結膜熱。
プール熱とも呼ばれ幼児期に流行することが多いのが特徴です。
1日の間に39~40度の高熱が出ることも。
アデノウイルスの感染経路
感染経路は3パターンあります。
それぞれご紹介していきましょう。
セックスやオーラルセックスによる感染
セックスによる感染については以下のパターンがあります。
- 女性の腟や子宮頚部に感染していたウイルスがセックスにより男性の尿道に感染
- 男性の尿道に感染していたウイルスがセックスにより女性の膣や子宮頚部に感染
オーラルセックスによりパートナーの咽頭に感染したアデノウイルスが尿道や膣に感染することも。
その他、アナルセックスやキスでも感染する可能性もあります。
逆に、目に感染したアデノウイルスが付着した手で、ペニスを触り尿道に感染するケースもあります。
飛沫感染
咳や鼻水の飛沫が感染経路となります。
感染者から飛んだ唾液・分泌物を鼻・口などから吸いこむ、また鼓膜に入りこむことで感染します。
接触感染
菌の付いたタオルや手すりなどを触ることでの感染も確認されています。
プール内に、塩素不足でアデノウイルスがいる場合は鼓膜へ直接侵入し、感染が広まることもあります。
アデノウイルスの潜伏期
アデノウイルスは感染し、約5~7日の潜伏期間をおいて発症します。
すぐには発症しないことが特徴です。
もし、感染の疑いのある人と接触した恐れがある場合は1週間は注意してください。
アデノウイルスは感染力が非常に強く、少しの飛沫や接触で感染します。
その感染力はインフルエンザと同等とも言われます。
アデノウイルスの検査
アデノウイルスと疑われる症状があった際には、早めの病院受診がおすすめです。
アデノウイルスは自然治癒しますが、放置することで重症化するケースもあります。
男性のアデノウイルス検査については2通りの方法で行います。どのような検査かそれぞれご紹介します。
尿検査
初尿で検査を行います。
性感染症の病原体を調べる場合、初尿が望ましいです。
理由としては初尿に最近やウイルスが含まれていることが多いためです。
健康診断などでは中間尿で検査することを指導されることが多いですが、その理由はウイルスが健康診断の妨げになるからです。
拭い検査※当院で拭い検査は行っておりません。
咽頭を拭う検査が拭い検査です。
痛みを伴う事はありません。
アデノウイルスの治療方法
アデノウイルスには、抗菌薬は効きません。
特効薬のようなものが無いため、症状に合わせた薬を服用し、体外へウイルスが排出されていくのを待つことが治療の基本です。
排尿痛やのどの痛みがひどい場合、また高熱の場合には、解熱鎮痛剤を処方することもあります。
感染力の強いウイルスなので、飛沫感染や接触感染などへの対策は必須です。
1週間程で痛みが治まるため完治したように感じますが、症状がなくても感染力のあるアデノウイルスが尿中に排出されることが確認されています。
症状消失後も1週間程度は、性行為は控えるようにしてください。
2週間で快方に向かいます。
またアデノウイルスは自己判断で市販薬を使わないようにしましょう。
目の結膜からもウイルスが入り込むため、感染している間は目を擦ったり、目やにを指で取ることはしないようにしてください。
アデノウイルスのよくある質問
アデノウイルスは自然治癒しますか?
非クラミジア性非淋菌性尿道炎としてアデノウイルスに感染している場合は自然治癒はしません。
放っておくと精巣上体炎や前立腺炎などになる場合もあります。
アデノウイルスは再発しますか?
一度完治したアデノウイルスは再発することはありません。
ですが再感染することはあるため、セックスの際のコンドームの着用など予防を心がけましょう。
神田西口クリニックのアデノウイルス治療について
神田西口クリニックではアデノウイルスに対し検査と対症療法を行なっています。
一人ひとりの症状に寄り添い、オーダーメイドの処置処方を行います。 些細なお悩みも、ぜひお気軽にご相談ください。
監修者

神田西口クリニック院長 鈴木 鑑
2003年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。
2014年都内某クリニックにて性感染症診療に従事。
10万人以上の性感染症患者さんの悩みに寄り添い解決してきた実績がある。
2023年神田西口クリニックの院長に就任。
所属学会・資格
- 日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医
- テストステロン治療認定医
- 日本性感染症学会
- 日本感染症学会
- 日本化学療法学会
- 日本メンズヘルス医学会