年齢とともに体力や代謝の低下、肌の老化、痩せない体などの不調に悩む男性は多いのではないでしょうか。
その原因に、加齢による成長ホルモンの分泌低下が影響しているといわれています。
成長ホルモンの分泌不足が続くと、心身の不調が起きたり外見上の若々しさが失われたりする恐れがあります。
そこで、成長ホルモン不足の影響がある方には「成長ホルモン補充療法」がおすすめです。
成長ホルモン補充療法は、簡単にご自宅で注射できる治療であり、老化の原因を根本から改善できるといった効果が得られます。
しかし、美容や健康に効果があっても、期待できる効果や副作用、安全性について不安に感じるでしょう。
こちらの記事では、成長ホルモン不足によって起こる症状や、補充療法で得られる効果、副作用などを詳しく解説します。
成長ホルモン補充療法について興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
成長ホルモンとは

成長ホルモンとは、子どもの成長に必要なホルモンとして認識される方は多いですが、実は生涯絶えず脳の下垂体という部位から分泌されているホルモンです。
成長ホルモンは、体にある物質をエネルギーに変える働きをしているため、以下のように全身のあらゆる部位に作用します。
- 脳の認知機能を維持
- 免疫機能の促進
- 骨の成長と発達、骨量の維持
- 体脂肪の減少
- 糖代謝のコントロール
- 筋肉量の増大
- 生殖機能の調整
しかし、成長ホルモンの分泌は、思春期をピークにそれ以降は年齢とともに分泌が低下することが特徴。
分泌低下にともなって、疲れやすく元気がない状態や免疫力の低下、太りやすい体など心身にさまざまな影響が現れます。
そこで、医療機関では不足している成長ホルモンを補充する治療を受けることが可能です。
成長ホルモン補充療法は、簡易的な注射器を用いて自宅でできるため、日常生活に取り入れやすい治療といえるでしょう。
成長ホルモン補充療法とは

年齢とともに成長ホルモンの分泌が低下し、体力や代謝の低下、肌の老化、太りやすい体になってしまうことは生理現象のため避けられません。
そこで、成長ホルモンを体内に注入する「成長ホルモン補充療法」を行います。
成長ホルモン補充療法は、ペン型タイプの簡易的な注射器を用いて、ご自分で皮下注射を行う治療法です。
皮下に注入された成長ホルモンは、血管を通じて全身に流れていきます。
当院で取り扱っている成長ホルモン製剤は1回の注射で1週間効果が続きますが、1回だけの注射で効果を感じられるわけではないため注意が必要です。
2回、3回と注射回数が増えていくたびに効果の実感を得やすくなります。
医師の指示にしたがって注射を続けることで、成長ホルモンの生理的な分泌パターンを作る治療法になります。
成長ホルモンが不足するとどうなる?

大人が長期的に成長ホルモン不足になると、代謝や免疫機能、認知機能に影響を与えて、さまざま臓器や器官の活動が低下したり精神症状が現れたりします。
現れることが多い主な症状として、以下のような心理面の症状が挙げられます。
・疲れやすい、体力がなくなったと感じる
・スタミナや活気が低下する
・やる気が出ない
・不安感やうつ気分が大きくなる
・集中力や思考力、記憶力、判断力などが低下する
このような症状は、他人からは「怠けている」と見られる場合があり、さらに辛い思いをする可能性もあるでしょう。
また、身体面に現れる症状として以下があります。
・免疫力が低下し、風邪をひきやすい
・血中の脂質がコントロールできず、高脂血症になる
・体脂肪が増加し、太りやすい体になる
・骨密度が低下する
・肌にツヤがなくなる
・傷が治りにくい
・脱毛が起こる
このように、大人が成長ホルモン不足になると心身の不調をきたし、美容と健康の老化が進んでしまいます。
成長ホルモン補充療法に期待できる効果
大人の成長ホルモンは、一般的に若返りホルモンともいわれ、不足しているホルモンを補充することでアンチエイジング効果が期待できます。
その他にも、日常生活で現れるさまざまな不調に対して効果を発揮し、代謝アップや骨や筋力の強化、ダイエット効果、疾患予防などが得られる治療です。
主に、以下のような方におすすめできます。
・疲れやすくなってきた、疲れが取れない
・お腹がぽっこり出てきた、たるんできた
・体力や筋力が落ちてきた気がする
・肌にハリやツヤがなくなってきた
・やる気が出なくて、気分が落ち込む
・ちょっとした事でもイライラしてしまう
このように、加齢によって身体や精神面に不調を感じている方は、成長ホルモン補充療法で体の内側から整えていくことが大切です。
ここでは、成長ホルモン補充療法で得られる効果について、1つずつ詳しく解説します。
アンチエイジング効果

成長ホルモンは全身の臓器と器官の成長を促し、傷ついている組織を修復する役割を持っています。
そのため、老化で衰えてしまった組織を修復して再生できるため、不足した成長ホルモンを補充することはアンチエイジングの効果が発揮するといえるのです。
また、成長ホルモンには抗利尿作用があります。抗利尿作用によって腎臓が体内の水分量がコントロールするため、肌の水分量にも良い影響を与えるといわれています。
そしてシワのできにくい肌になり、ツヤやハリのある若々しい肌を手に入れられると期待できるでしょう。
骨を丈夫にする

成長ホルモンは骨の伸長を促進する働きがあり、骨皮質や骨形成の増加、骨吸収を抑えて骨密度を高めるといった効果が期待できます。
とくに、加齢によって骨密度が低下し、骨粗しょう症や骨折を引き起こす可能性があるため、成長ホルモン分泌は重要です。
高齢の方が骨折してしまうと、長期の安静によって体力や筋力低下、心理面への影響、骨折部位の治りが遅いといった状態になるかもしれません。
寝たきりや生活の質の低下につながる恐れもあるため、成長ホルモンが不足している場合は適したタイミングと量を補充することが大切といえます。
ダイエット効果

成長ホルモンには、タンパク質の合成や糖代謝、脂質代謝などの代謝機能が促進される事で、内臓脂肪を含めた体脂肪を減少させる働きがあります。
また、睡眠の質を改善してくれる働きもあり、翌日に疲れが取れにくい元気な心身を維持できるでしょう。
基礎代謝や日中の活動量がアップし、エネルギーを消費しやすい身体に整います。
その結果、除脂肪組織の増加と体脂肪の減少がみられ、健康的なダイエットが期待できるでしょう。
認知症や糖尿病の予防

成長ホルモンには、内臓脂肪を減少させる働きがあります。
内臓脂肪の減少は、糖の吸収を促すインスリンの効き具合を改善し、糖尿病の発症や進行を防ぐ効果が期待できます。
アルツハイマー型認知症は、脳の糖尿病と言われ、糖尿病を予防することは、アルツハイマー型認知症を予防することになります。
さらに、血管性認知症は脳梗塞や脳出血などの脳の血管の異常が原因であり、糖尿病は血管をボロボロにしていく原因となることから、血管性認知症も糖尿病予防が重要になってきます。
また、成長ホルモンは、前向きや積極性、明るい気持ちになれるといった精神面にも良い影響を与えます。
その結果、うつ状態になりにくく、意欲や活気の向上にもつながります。
筋力向上

成長ホルモンは、筋肉の再構成を促進させる働きがあります。
筋肉の断面積を増加することで、筋力の増強や筋肉量の増加が期待できます。
また、筋力の向上は代謝アップやダイエットにもつながり、健康な身体が維持できるでしょう。
たとえば、筋力に自信がついてトレーニングを行えるようになれば、大きな筋肉が刺激されて成長ホルモンの分泌を促せます。
さらに、「運動したい」という意欲が高まるため、活力ある毎日を過ごせるようになることもメリットです。
このように、成長ホルモンを補充して筋力が向上すると、身体面と精神面のどちらにも良い効果が期待できるでしょう。
心臓病のリスクを下げる

成長ホルモンの低下は、LDLコレステロールの増加、中性脂肪の増加、HDLコレステロールの減少が引き起こされ、脂質異常症を発症するリスクが高まります。
この脂質異常症の状態をそのままにしておくと、動脈硬化の進行につながる恐れがあるでしょう。
動脈硬化は、動脈の血管が硬くなってしまい弾力性や柔らかさが失われた状態です。動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞などの病気を発症するリスクが高まります。
そこで、不足している成長ホルモンを補充すると、コレステロール値や中性脂肪値が正常化されていき、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを下げる効果が期待できます。
成長ホルモン補充療法の副作用
成長ホルモン補充療法は、インスリン注射と同様のペン型タイプを使用します。
針先は、一般的な採血や注射針と比べて非常に細く短いのですが、痛みを感じる場合があります。
また、定期的に注射を打つため、注射する部位はその都度ずらす必要があります。
しかし、同じ部位にばかり注射をしてしまった場合は、発赤や腫れ、皮膚が硬くなるといった副作用が起きる場合があるでしょう。
その他にも、以下のような副作用を生じる可能性があります。
・内出血
・吐き気、下痢
・注射部位のつっぱり感や熱感、痺れ
・まれにアレルギーや感染
・倦怠感、頭痛、めまい、筋肉痛、胸痛、発熱、咳、冷や汗、むくみなど
・蕁麻疹や痒みなど
稀に副腎皮質機能不全や高血糖が起きる方もいます。
成長ホルモン補充療法は、「自宅で副作用やトラブルが起きたらどうしよう」と不安に感じる方もいるかもしれません。
使用方法についてはしっかりと説明があるため、不安は解消されるでしょう。
また、定期的に採血や必要な検査を行い、安全面に十分注意しながら治療を進めていきます。
また、治療は低用量から始めて体調を見ながら調整していく流れになっています。定期的に診察や検査を受けることで、できるかぎり副作用が出現しないように調整できることも特徴です。
もし、副作用について不安がある場合は、治療を受ける前にしっかりと医師に相談してください。
成長ホルモン補充療法を受けられない人
成長ホルモン補充療法は、下記に該当する方には施術を行うことができません。
・悪性腫瘍の既往がある方。
・B型肝炎、C型肝炎の既往がある方。
・自己免疫疾患の既往がある方。
・甲状腺、下垂体疾患の既往がある方。
・妊娠中または2ヶ月以内に妊娠する予定の方、及び授乳中の方。
また、糖尿病に罹患しており、コントロール不良の方は、成長ホルモン補充治療をお断りすることがあります。
この他にも、治療中に気分が悪くなった場合は、症状によっては治療を中止する可能性もあります。
もし、ご自分が治療を受けられる状態か不安な方は、医師に相談してください。
成長ホルモン補充療法についてのよくある質問
成長ホルモン補充療法は安全ですか?
成長ホルモン補充療法で注入する成長ホルモンは本来、脳の下垂体という部位から分泌されている物質です。
もともと分泌されている成長ホルモンの量が不足しているために、外から注射によって補う治療法になります。
人によって成長ホルモンの分泌量や不足している量、補充すべきタイミングなどが異なり、その見極めが大切です。
そこで、医療機関で受けられる治療では、一人ひとりの身体の状態や体調に配慮し、定期的な採血や検査などを行います。その結果をもとに、補充する成長ホルモンの量や注射の回数、タイミングなどのスケジュールを立てるという流れになっています。
そのため、一人ひとりに適した成長ホルモン補充療法が受けられることから、世界各国でも行われており安全性は高いとされています。
年齢制限はありますか?
成長ホルモン補充療法は、年齢による制限が無く、性別問わず治療を受けられることが特徴です。
ただし、小児や高齢者、妊婦、授乳婦に関しては成長ホルモン補充療法はお断りしております。
また、上記に該当する持病がある場合も治療が受けられないため、事前に医師と相談することが重要です。
副作用はありますか?
成長ホルモン補充療法は、ペン型タイプの注射器で細くて短い注射針を用いるため、強い痛みを感じることはほとんどありません。
しかし、成長ホルモンの注入によって、体内に以下のような副作用を生じる可能性があるでしょう。
・むくみ
・手根管症候群
・インスリンに対する反応の低下
・血圧の上昇
・頭痛や視神経が腫脹をともなう高血圧
・甲状腺ホルモン生成の低下
この他にも、定期的に注射を打つことで、注射部位に発赤や腫れ、皮膚が硬くなるといった副作用が生じる可能性もあります。
できるかぎり副作用が生じないよう、正しい注射の手技を覚えることや少しでも不安がある場合は医師に相談することが大切です。
どこに注射をすれば良いですか?
成長ホルモン補充療法はペン型タイプを使用し、医師から指示されたスケジュールに沿って自分で皮下注射を行う治療法です。
皮下注射ができる部位は、皮下脂肪の厚みがあり柔らかく、神経や血管、関節などから離れている場所が適しています。
主な皮下注射の部位は、以下の通りです。
・上腕部(肩と肘の間あたり)
・大腿部(ふともも)
・腹部(とくに下腹部)
・臀部(おしり)
これらの部位をローテーションを組んで、毎回違う部位に注射をしていきます。もし、同じ部位ばかりに皮下注射を行うと、皮膚につっぱり感や熱感が現れたり皮膚が硬くなったりと副作用が生じる恐れがあるでしょう。
このような副作用をできるかぎり防ぐために、ご自宅に帰る前に皮下注射の手技や注意点、注射箇所の具体的な位置などの説明を行います。
成長ホルモン補充療法で若々しく活力ある日常を送ろう
成長ホルモン補充療法は、ペン型タイプの簡易的な注射器を用いて、ご自宅にいながら自分で手軽に扱える治療法です。
年齢とともに減少していく成長ホルモンは、このように補充を続けることで、少しずつ成長ホルモンの生理的な分泌パターンを作れる身体に変われるでしょう。
そして、アンチエイジング効果やダイエット効果、骨や筋力を増強する効果、認知機能の改善、糖尿病や心臓病などの病気予防など、美容と健康維持における効果が期待できます。
加齢によって体力や筋力の低下、疲れやすい身体、太りやすい身体、風邪を引きやすい、やる気が出ない、イライラするなど、さまざまな心身の不調がある方は、成長ホルモン補充療法の検討をおすすめします。
毎日の疲れや加齢による体の老化をケアし、若々しい身体や見た目だけではなく、心の奥から活気ある自分を取り戻しましょう。
ご自分の心身の不調で悩んでいる方や、成長ホルモン補充療法について不安や疑問点がありましたら、医師にお気軽にご相談ください。
監修者

神田西口クリニック院長 鈴木 鑑
2003年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。
2014年都内某クリニックにて性感染症診療に従事。
10万人以上の性感染症患者さんの悩みに寄り添い解決してきた実績がある。
2023年神田西口クリニックの院長に就任。
所属学会・資格
- 日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医
- テストステロン治療認定医
- 日本性感染症学会
- 日本感染症学会
- 日本化学療法学会
- 日本メンズヘルス医学会