EDとは「Erectile Dysfunction」の略であり、日本語では「勃起不全」と訳されます。
しかし、まったく勃起が起こらないケースに限らず、
硬さや維持が不十分であったり中折れしてしまって「満足な性交が行えない状態」と定義されています。
- 最近なかなか勃起しなくなった
- 挿入できても、途中で中折れしてしまう
- 性欲はあるのに勃起しない
- 完全に硬くならない
こんな症状がある場合は、EDが疑われます。
「いざという時に勃起できない」
これは男性にとって重要な問題です。
ただ、一概にEDといっても、その症状や原因は個々によってさまざまです。
またEDは、生殖器の問題だけでなく、別の大きな病気が隠れている可能性もあります。
本記事では、EDの原因や治療方法、治療薬について解説します。
目次
EDとは
ED(Erectile Dysfunction)とは、日本語で“勃起不全”のことをいいます。
EDは”まったく勃起が起こらない”というケースに限りません。
勃起はするけど、行為の途中で中折れしてしまったり、硬さが不十分だったりして、”満足いく性行為が行えない状態”がEDと定義されます。
全国のEDの患者数は、軽症も含めると約1,800万人と推定されています。
決してめずらしい病気ではなく、男性なら誰にでも起こりうる問題です。
近年のED患者の傾向
近年では、社会環境の変化によって20〜30代の若い世代の患者数も増加してきています。
EDといえば、年齢を重ねた中年以降の男性に起こる病気のイメージがあります。
そのため、「もしかしてEDかも?」と思っていても「まだ若いから大丈夫だろう」と、そのまま様子をみる方も少なくありません。
一人で悩まず、まずは医療機関に相談することが大切です。
EDの原因
勃起には神経や血管、ホルモンなどが関係しています。
これらが正常に働くことで勃起が成立します。そのため、EDの原因もさまざまです。
EDの原因は下記に分類されます。
器質性ED
器質性EDとは、身体的な原因によって起こるEDのことをいいます。
- 怪我による神経障害
- 外傷後
- 前立腺がんなどの術後
- 脂質異常
- 高血圧
- 血管の病気
- 糖尿病
- 肥満・運動不足
などが挙げられ、原因は多岐にわたります。
EDは心筋梗塞や脳梗塞の前兆の可能性
器質性EDで特に気をつけたいのが、糖尿病や高血圧、血管の病気です。
陰茎には”陰茎動脈”が通っており、勃起に深く関係しています。
糖尿病や高血圧などの病気がある方は、動脈硬化を合併している場合が多いです。
動脈硬化により、血管の弾力性が失われることで、血管が詰まりやすい状態となります。
陰茎動脈の直径は1〜2mmと細く、動脈硬化の影響を受けやすい血管です。
動脈硬化によって陰茎動脈の血流が悪くなることで、勃起しづらくなります。これがEDの原因になります。
しかし、問題はそれだけではありません。
もし動脈硬化がEDの原因になっているとしたら
心筋梗塞や脳梗塞など、大きな病気の前兆である可能性も考えられます。
特に中年以降の方は注意しましょう。
男性ホルモンの影響
男性ホルモンであるテストステロンは、ヒゲや筋肉量など「男性らしさ」を作る働きをしています。
身体面に対する働きだけではありません。
記憶力の維持や、やる気をもたらすなど、精神面での働きにも関与し、性欲にもテストステロンが影響しています。
しかし、男性にとって大切なテストステロンは、加齢とともに減少していきます。
そのため年齢を重ねると、うつ、イライラなどの精神的な問題を抱えやすく、同時に性欲も低下します。
結果、EDの症状を悪化させる原因となるのです。
心因性ED
心因性EDとは、心理的な原因によって起こるEDのことをいいます。
- 緊張しやすい
- 職場や家庭内など、人間関係のストレス
- 性行為の失敗経験、子作りのプレッシャー
- うつ
など、さまざまな原因があります。
また若い方に多い原因としては、動画サイトなど2次元の世界へのアクセスが容易になったことがあげられます。
「2次元では大丈夫でも、実際の女性の前では無理」など、生身の人間と面と向かってコミュニケーションをとる機会が減少しています。
そのような社会的な背景が原因となり、ED患者数は増加傾向です。
性行為失敗をはじめ、性行為に対してのマイナスな経験をすると、それ以降自信がなくなってしまいます。
自信がない状態で性行為を試みても、さらに勃起しづらくなってしまい、結果として性行為そのものを避けるようになってしまいます。
混合性ED
器質性EDと心因性EDが混在しているものを、混合性EDといいます。
ED患者さんの多くが、複数の原因を持っているといわれています。
例えば、
- 中年以降で高血圧や動脈硬化
- 職場のストレス
この2つの原因が重なることで混合性EDとなります。
その他EDの原因
薬剤によるもの
服用しているお薬の影響でもEDの原因となることがあります。
EDの症状がある方で、他に治療中の病気がある場合は、飲んでいるお薬の影響を疑います。
ただ、勝手にお薬をやめてしまうことは避けるべきです。
自己判断による内服の中断は、病気の悪化の恐れもあります。まずは医師に相談しましょう。
主に注意したい薬剤は下記になります。
- 降圧薬
- 抗うつ薬
- 前立腺肥大症治療薬
- 非ステロイド性抗炎症薬
これらを飲んでいるからといって、100%EDを発症するわけではありません。
EDについて相談をされる際には、他の病気の治療中であることをかならず医師に伝えましょう。
EDの治療方法
ED治療には、下記5つの方法があります。
- 内服
- 血管作働薬(プロタグランジンE1など)の陰茎海綿体への注射
- 陰圧式勃起補助具
- 衝撃波
- 手術―陰茎プロステーシス
ED治療には、まずED治療薬の内服が選択されます。
内服で効果がみられない場合、副作用や他のお薬との飲み合わせの関係でED治療薬が使用できない場合など、他の治療方法が選択されます。
当院では、内服薬による治療のみでしたが、陰圧式勃起補助具(Vigor2020)の取り扱いを開始しました。
この項では内服治療と、陰圧式勃起補助具(Vigor2020)について解説します。
内服薬での治療
国内で使用が認められているED治療薬は、3種類(バイアグラ、レビトラ、シアリス)です。
“ED治療薬“と聞くと、作用が強いとか、自分の意志とは関係なく勃起してしまう、というようなイメージを持たれている方もいるかと思いますが、そうではありません。
陰茎への血流を良くし、勃起しやすくする働きをするのがED治療薬の役割です。
性的な刺激や興奮が起こらないと勃起しませんので、心配いりません。
ED治療薬は、
- 性行為の直前に服用するもの
- 服用して効果が現れるまで数時間かかるもの
と、種類によって作用が異なります。
効果の出方には個人差があるものです。どのようなタイミングで使用したいのかなど、医師とよく相談して決めましょう。
また、ED治療薬は、持病や普段飲んでいるお薬によって使用できないものや、使用にあたって慎重にならなければならないものがあります。
特に下記の病気がある方は注意しましょう。
- ED薬に対するアレルギーの既往がある
- 高血圧、低血圧
- 不整脈
- 心筋梗塞や脳梗塞の既往がある
- 肝機能や腎機能が悪い
- 目の病気がある
なお、ED治療薬の副作用は
- ほてり
- 頭痛
- 鼻づまり
- 目の充血
- 胃の不快感
- 光が青く見える(バイアグラの場合)
- 背中のはり(シアリスの場合)
などが挙げられます。
副作用はどのお薬にもあるものですが
使用にあたって不安や疑問がある場合は、遠慮なく医師や薬剤師に相談してみましょう。
また、ED治療薬には狭心症やHIV治療薬など、飲み合わせが禁忌とされているお薬もあります。
重大な副作用を起こす危険があるので、普段飲んでいるお薬があれば、必ず医師に伝えましょう。
陰圧式勃起補助具(Vigor2020)
陰圧式勃起補助器具とは、空気圧(陰圧:−170±30mmHg)を利用し、陰茎の海綿体に血液を送り込むことで勃起を補助する医療器具です。
日本泌尿器科学会・日本性機能学会が定めたED診療ガイドライン第3版によると、
ED治療薬が使えない方や、効果が不十分な方などが
その次の治療方法の一つとして陰圧式勃起補助具を使用するように記載されています。
下記の方が適応になります。
- ED治療薬で効果がみられなかった方
- ED治療薬で副作用が強く出てしまう方
- 他の薬との飲み合わせの関係でED内服薬が使用できない方
- 前立腺癌切除術後の陰茎リハビリテーションが必要な方(手術後にEDになってしまう可能性が高いため)
- 前立腺癌を予防したい方
- 陰茎を大きくさせたい方
陰圧式勃起補助器具は、医療機関のみの取り扱いになります。
医療機関以外で入手できるものは安全性に問題があったり、効果がない場合が多いので注意しましょう。
ED改善のための生活習慣
EDの改善には
これまでの生活習慣を見直し、体質の改善を行いながらED治療薬を併用する方法があります。
内服の効果を高めるために、ぜひ取り入れてみることをおすすめします。
この項ではED改善のための生活習慣のポイントをお伝えします。
食生活の改善
EDの原因となる肥満や高脂血症を避けるために、高カロリー、高脂肪、糖質の摂りすぎには注意しましょう。
塩分の摂りすぎも高血圧につながりますので減塩を心がけましょう。これは動脈硬化や生活習慣病を予防する意味でも大切です。
EDは動脈硬化による血流の低下も原因の一つです。
よって、血液をサラサラにしたり、血行を良くしたりするような食材を取り入れるのもよいでしょう。
一般に、血液をサラサラにする食材といえば、魚に含まれるEPA・DHAなどが有名です。
しかし、「これを食べればEDが治る」という食材ではありませんし、他にも存在しません。
あくまで「EDの予防や改善に効果が期待できる食材」として捉え、同じ食材を過剰にとることは避けましょう。
健康的なバランスのよい食事をとることが大切です。
運動療法
運動不足は肥満につながり、結果としてEDの原因にもなります。
お薬や食生活の改善に加え、適度な運動を取り入れることで、EDの改善が期待できます。
特に有酸素運動はEDの改善に効果があるとされています。
有酸素運動には
- ウォーキング
- ジョギング
- 水泳
- サイクリング
など、さまざまな方法があります。
ご自身の体力に合わせながら、時間のあるときにぜひ取り入れてみましょう。
ストレスの軽減
EDは身体的な問題だけでなく、過度な緊張やストレス、うつなどの心理的な原因によっても起こります。
そのため、日頃からストレスをためないように意識することは、EDの改善につながるといえます。
しかし、ストレスをゼロにすることは不可能です。
日常生活の中で、ストレスを解消する方法を見つけたり、自宅ではなるべくリラックスできる状態で過ごしたりするなどの工夫が必要になります。
禁煙する
EDを改善するためには、禁煙をしましょう。
タバコには血管を収縮させ、血流を悪くする作用があります。
EDを改善するためにお薬を飲んでいても、喫煙で体内の血流を悪くさせてしまうことで、効果が出づらくなってしまう可能性もあります。
喫煙は生活習慣病をはじめとした、多くの病気の原因となるものです。
ご自身の体のためにも、禁煙することが望ましいです。
必要に応じて、禁煙外来を受診してみるのもよいでしょう。
神田西口クリニックのED治療
神田西口クリニックは男性のためのクリニック。
受付スタッフ、看護師、医師すべて男性です。
ED治療については、さまざまな情報が溢れているからこそ不安も大きいと思います。
なのでまずは些細なお悩みも、ぜひお気軽にご相談ください。
一人ひとりの症状に寄り添い、オーダーメイドの処置処方を行います。
ED治療の料金
ED治療についてのよくある質問
20代、30代、40代でEDの治し方は異なりますか?
EDの治療方法は、年代により異なるといったことはありません。
しかし、若い人なら心因性ED、中年以降の人なら器質性EDや混合性EDが多い
というように、年齢によって起こりやすい原因が異なります。
それぞれの原因に合わせて対処していきますが、EDの治療にはまず内服薬が選択されます。
医師とよく話し合い、治療方針を決めましょう。
薬局で買えるED治療薬を使用するか悩んでいます。
現在薬局では、ED治療薬は販売されていません。
ED治療薬は3種類あり、いずれも医師の処方が必要なものになります。
薬局で「EDに効果がある」と謳われている商品は、精力剤や強壮剤とよばれるものです。
栄養ドリンクやサプリメントとして販売されていますが、疲労回復や体力増進に効果があるもので、勃起そのものを助ける効果はありません。
また、個人輸入できる場合もあるようですが、擬似医薬品である可能性が高いです。
擬似医薬品では効果がないばかりか、副作用などの健康被害も心配です。海外製の薬品は危険であると認識しましょう。
確実にEDを改善するためには、医療機関を受診し、医師の診察のもとでお薬を処方してもらいましょう。
またサプリメントを使用する場合も、念のため医師に相談してからの方が安心です。
EDは自然治癒しますか?
EDは男性にとって、非常にデリケートな問題です。
そのため、恥ずかしさから受診をためらってしまったり、そのまま様子をみてしまったりするケースも少なくありません。
体に異常がない心因性EDや、症状が軽度の場合は、生活習慣の見直しやストレスを解消するなどの対策で、改善する可能性もあります。
しかし器質性EDの場合は、他の病気が隠れている可能性もあり、自己判断は危険です。
大きな病気にかからないためにも、症状がある場合は医療機関を受診し、医師の診察を受けてみましょう。
ED治療中は食事や飲酒で気を付けることはありますか?
器質性EDの場合、糖尿病や高血圧、肥満などの生活習慣病が関わっています。
そのため、生活習慣の改善を心がけることはEDの改善にもつながります。
高カロリーな食事や脂質、糖質、塩分の摂りすぎには注意しましょう。
すぐに効果が出るものではないので、少しずつでも体質改善を心がけることが大切です。
また、治療中の飲酒についてです。
適度なアルコール摂取は、緊張を和らげる効果もあるため、少量であれば問題ないでしょう。
しかし、大量にアルコールを摂取すると、逆に勃起しづらくなってしまうため飲み過ぎは控えましょう。
また、肝機能が悪い方は、飲酒に関しても医師とよく相談しましょう。
EDは誰にでも起こりうる病気
本記事では、EDの原因や治療方法などについて解説しました。
EDには器質性、心因性など、さまざまな原因があり、人によっては複数の原因が重なって起こる場合もあります。
近年の社会環境の変化も相まって、EDは誰にでも起こりうる病気です。
男性にとってEDはデリケートな問題であり、医療機関にかかるのは抵抗があるかもしれません。
しかし、なかには動脈硬化や糖尿病などの病気が隠れている可能性もあります。
診察もプライバシーへの配慮がされていますので、まずは気軽に医師に相談してみましょう。
監修者

神田西口クリニック院長 鈴木 鑑
2003年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。
2014年都内某クリニックにて性感染症診療に従事。
10万人以上の性感染症患者さんの悩みに寄り添い解決してきた実績がある。
2023年神田西口クリニックの院長に就任。
所属学会・資格
- 日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医
- テストステロン治療認定医
- 日本性感染症学会
- 日本感染症学会
- 日本化学療法学会
- 日本メンズヘルス医学会