ED とは、「Erectile Dysfunction」の略であり、日本語では「勃起不全」と訳されます。
しかし、まったく勃起が起こらないケースに限らず、硬さや維持が不十分であったり中折れや途中で萎えてしまって、「満足な性交が行えない状態」と定義されています。
EDの患者数は全国で、軽症も含めると約1800万人と推定されており、実は珍しい疾患ではなく、誰にでも起こりうる問題です。
さらに近年では、仕事のストレスや職場や家庭内の人間関係のいざこざ、また、動画サイトなど2次元の世界へのアクセスが容易で内容も充実しており、生身の人と面と向かってコミュニケーションをとる機会が減少していることなどを背景に、ED患者数は増加の一途をたどっています。
かつては、中年以上の方が大半だったEDですが、上記のような理由から、20代や30代の若年層の患者数も増加してきております。
いざという時に勃起できないというのは、男性にとっては非常に重要な問題です。
一度でもそういった状態を経験すると、それ以降自信がなくなってしまい、その状態で性行為に挑もうとしてもさらに勃起しづらくなってしまい、性行為そのものを避けるようになってしまいます。
さらに、EDは心筋梗塞や脳梗塞の前兆であったり、前立腺癌のリスクが増えたり、また認知症にもなりやすくなるなど、単に満足いく性行為が出来なくなるだけではない深刻な問題を孕んでおります。
当院では、そのような悩みを抱えた男性に対して、丁寧でわかりやすい、また、プライバシーへの配慮を徹底した診療を心がけております。
目次
EDの原因別分類
①器質性ED
加齢、病気(高血圧、糖尿病、腎機能障害、前立腺肥大、脳卒中など)、下半身の外傷や手術によるもの。
②心因性ED
ストレス、うつ病、緊張状態によるもの。
③混合性ED
上記、①と②が混在しているもので、一番頻度が多い。
その他、肥満、運動不足、男性ホルモン低下、薬剤(降圧剤の一部、抗うつ薬、AGA治療薬など)が原因になることもあります。
治療方法
EDの治療方法には、下記があります。
①内服薬(バイアグラ、レビトラ、シアリス)
②陰圧式勃起補助具(Vigor2020)
③血管作働薬(プロタグランジンE1など)の陰茎海綿体への注射
④衝撃波照射
⑤陰茎プロステーシス
上記の中で②~⑤は、①の内服薬で効果がみられなかったり、副作用や他の薬との飲み合わせの関係の影響で内服薬が使用できない方が対象になります。
当院では、①の内服薬による治療のみでしたが、最近②の陰圧式勃起補助具(Vigor2020)の取り扱いを開始しました。
内服薬について
国内で使用が認められているED薬は3種類(バイアグラ、レビトラ、シアリス)です。
3種類ともジェネリックがあり、またバイアグラには「ODフィルム」というシート状のものもあります。
これはシート状なので財布などにしまいやすく、また水無しで内服できるものもあります。
さらには、シアリスと同成分でもともとは前立腺肥大の内服薬である「ザルティア5㎎」もあります。
レビトラは生産終了したため、院内在庫分のみ(20㎎は無し)となります。
バイアグラ(一般名:シルデナフィル)






ジェネリックバイアグラ(一般名:シルデナフィル)








レビトラ(一般名:バルデナフィル)


ジェネリックレビトラ(一般名:バルデナフィル)



シアリス(一般名:タダラフィル)



ジェネリックシアリス(一般名:タダラフィル)






ザルティア(一般名:タダラフィル)


ジェネリックザルティア(一般名:タダラフィル)


〇各治療薬の特徴〇
以下に、当院で扱っているED治療薬の違いがわかる表を用意しました。

〇ED薬を使用できない場合〇
以下のような場合では、ED薬が使用できません。ED薬の種類によって、使用できない条件が微妙に異なります。条件が異なる部分は、青太文字にしてあります。
バイアグラ(シルデナフィル)を使用できない方
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴がある
- 硝酸剤or一酸化窒素(NO)供与剤使用中(貼付剤含む)
- アミオダロン、抗HIV薬の一部(カレトラ®、スタリビルド®、ノービア®、プリジスタ®)、リオシグアト(アデムパス®)内服中
- 心血管系障害を有するなど性行為が不適当
- 重度の肝機能障害がある
- 低血圧(安静時血圧<90/50mmHg)、または、コントロール不良の高血圧(安静時血圧>170mmHg/100mmHg)
- 脳梗塞・脳出血や心筋梗塞の既往歴が最近6ヵ月以内にある
- 網膜色素変性症(進行性の夜盲症、視野狭窄)
- 未成年者(ただし、既婚者を除く)
レビトラ(バルデナフィル)を使用できない方
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴がある
- 硝酸剤or一酸化窒素(NO)供与剤使用中(貼付剤含む)
- 心血管系障害を有するなど性行為が不適当、先天性のQT延長(QT延長症候群)がある、不安定狭心症がある
- クラスIA(キニジン,プロカインアミド、ジソピラミド、シベンゾリン、ピルメノール) orクラスIII(アミオダロン,ソタロール)、抗HIV薬、抗真菌薬、リオシグアト(アデムパス®)を内服中
- 脳梗塞・脳出血や心筋梗塞の既往歴が最近6ヵ月以内にある
- 重度の肝機能障害がある
- 血液透析が必要な腎障害
- 低血圧(安静時血圧<90/50mmHg)、または、コントロール不良の高血圧(安静時血圧>170mmHg/100mmHg)
- 網膜色素変性症(進行性の夜盲症、視野狭窄)
- 未成年者(ただし、既婚者を除く)
シアリス(タダラフィル)を使用できない方
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴がある
- 硝酸剤or一酸化窒素(NO)供与剤使用中(貼付剤含む)
- リオシグアト(アデムパス®)内服中
- 心血管系障害を有するなど性行為が不適当、不安定狭心症がある、コントロール不良の不整脈がある
- 低血圧(安静時血圧<90/50mmHg)、または、コントロール不良の高血圧(安静時血圧>170/100mmHg)
- 心筋梗塞の既往歴が最近3ヵ月以内にある
- 脳梗塞・脳出血の既往歴が最近6ヵ月以内にある
- 重度の肝機能障害がある
- 網膜色素変性症(進行性の夜盲症、視野狭窄)
- 未成年者(ただし、既婚者を除く)
上記以外に、使用できないわけではないですがED薬を内服する際には慎重に内服しなくてはならない薬があります。
一部の抗生剤(エリスロマイシン、クラリスロマイシンなど)、一部の胃薬(シメチジンなど)、一部の抗真菌薬(イトラコナゾール、ケトコナゾールなど)、グレープフルーツなどが該当します。
これらの薬はED薬の血中濃度を高いままにし、ED薬による副作用が強く出てしまう可能性があります。
どのED薬も1錠から購入可能です。
陰圧式勃起補助具について
「陰圧式勃起補助器具」とは空気圧(陰圧:マイナス170±30mmHg)を利用し、ペニスの海綿体に血液を送り込むことで勃起を補助する医療器具です。以前は、医療器具として厚労省から認可を受けたのもとして「VCD式カンキ」というものがあったのですが、既に生産を終了しているため購入はできませんでした。
しかし、2021年10月に株式会社A&HBが、厚生労働省から管理医療機器(医療機器製造販売承認番号30300BZX00279000)として認可を受けた「Vigor(ビガー)2020」の販売を開始しました。厚生労働省から承認を得た陰圧式勃起補助器具としては、国内で入手できるのはこれのみです。
日本泌尿器科学会・日本性機能学会が定めたED診療ガイドライン第3版によるとED治療薬禁忌や効果不十分、重篤な副作用が見られる方には、その次の治療方法の一つとして陰圧式勃起補助具を使用するように記載されています。

こんな方にオススメ
・ED内服薬で効果がみられなかった方
・ED内服薬で副作用が強く出てしまう方
・他の薬との飲み合わせの関係の影響でED内服薬が使用できない方
・前立腺癌切除術後の陰茎リハビリテーションが必要な方
(手術後にEDになってしまう可能性が高いため)
・前立腺癌を予防したい方
・陰茎を増大させたい方